歯並びや噛み合わせを改善するための矯正治療には、さまざまな方法があります。その中でも、マルチブラケット装置は最も一般的で歴史のある矯正装置の一つです。本記事では、マルチブラケット装置の仕組みやメリット・デメリット、お手入れ方法について詳しく解説します。
1. マルチブラケット装置とは?
マルチブラケット装置は、歯の表面にブラケットを接着し、ワイヤーを通して歯を動かす矯正装置です。歯を3次元的にコントロールすることができ、歯の位置や傾斜だけでなく、歯根(歯の根っこ)まで動かすことができます。通常、金属製のブラケットとワイヤーが用いられますが、近年では審美性を考慮したセラミック製やプラスチック製のブラケットも登場しています。
1-1. マルチブラケット装置の構成要素
マルチブラケット装置は、主に以下のような部品で構成されています。
◉ブラケット:歯を動かすアーチワイヤーを維持するために、歯の表面に接着する小さな装置です。金属、セラミック、サファイアなどの素材があります。歯科用接着剤を使用し、歯に接着していきます。
◉アーチワイヤー(矯正用ワイヤー):ブラケットに通して歯を移動させるためのワイヤーです。治療初期~中期には、主に丸型で細いアーチワイヤーから使用し、その後、長方型で太さサイズを太くしていきます。材質は、ニッケルチタン(Ni-Ti)合金のものが多いです。デコボコがたくさんある歯列であっても、ワイヤーをそれぞれのブラケットのスロット(ブラケットの溝)に密着させ矯正力を加えることができます。
◉エラスティックモジュールやリガチャーワイヤー:ブラケットスロットに挿入したワイヤーをに固定するための部品です。治療のステージに合わせてどちらかを選択します。目立ちにくい透明なゴムもあります。
◉バンド:大きな矯正力が加わる大臼歯(奥歯)に装着する金属のリングで、装置をしっかり固定する役割があります。さまざまなサイズがあるため、歯に合わせた最適なものを選択し装着します。装着してすぐはモノが挟まったような感じや多少の痛みが生じることがありますが、次第に慣れてきます。
◉コイルスプリング:ブラケット間に装着し圧縮したときの反発力を利用して歯と歯の間にすき間をつくるときや、歯と歯の間の幅のキープなどに使用します。
◉フックや顎間ゴム:フックと顎間ゴムはセットで使用されることが多い装置になります。アーチワイヤーにフックを装着し、フック間を顎間ゴムとよばれる小さなゴムをひっかけ正中(上下の歯の真ん中)の調整や臼歯部(奥歯)のかみ合わせの調整などを行う際に使用します。
◉エラスティックチェーン(パワーチェーン):抜歯をして矯正治療を行う場合や、歯並びを整えていく段階で隙間が生じた場合に使用し、歯を引き寄せ隙間を閉じる装置です。
2. マルチブラケット装置のメリット
2-1. 幅広い症例に対応できる
マルチブラケット装置は、軽度から重度の不正咬合まで幅広い症例に適用できるのが大きなメリットです。歯を正確にコントロールできるため、歯のねじれやスペース不足、深い噛み合わせなどの改善に適しています。歴史が長く、ある程度の治療法が確立しているため、治療期間の短縮が見込めたり、安心して治療を受けることができます。
2-2. 高い治療効果
ワイヤーの力を利用して歯を効率的に移動させることができるため、比較的短期間で治療が進むことがあります。また、精密な歯のコントロールが可能であり、理想的な歯列を作りやすい点も特徴です。
2-3. 耐久性と安定性
金属製のブラケットやワイヤーは非常に耐久性があり、破損や摩耗に強いです。また、ブラケットは歯にしっかりと接着されているため、装置が外れたり、調整が必要な期間が長引くことが比較的少なく、安定した矯正が行えます。長期にわたる矯正治療でも、装置が確実に機能し続けるため、信頼性があります。
3. マルチブラケット装置のデメリット
3-1. 見た目が気になる
金属製のブラケットやワイヤーは、口元で目立ちやすいため、特に、仕事や学校などで人と接する機会が多い患者さんにとって、見た目に抵抗を感じることがあります。ただし、最近では、白や透明のセラミックやプラスチックのブラケットを使用することで目立ちにくくすることも可能です。
※様々なメリットにより金属製のブラケットを選択する場合もあります。
3-2. 口腔内の違和感や痛み
マルチブラケット装置を初めて装着した際や調整後には、歯や歯茎や頬の粘膜に痛みや違和感を感じることがあります。ブラケットやワイヤーが頬や舌に擦れて口内炎ができることもあり、装置に慣れるまでの期間はストレスを感じやすいです。
特に、初期の数日間は食事がしにくくなることもありますが、時間が経つにつれて徐々に慣れていきます。
3-3. 歯磨きが難しくなる
ブラケットやワイヤーが歯に付いており装置の凹凸があるため、歯磨きが通常よりも難しく汚れが溜まりやすくなります。そのため虫歯や歯周病のリスクが高まります。そのため、矯正中は通常よりも丁寧な歯磨きが必要になります。
4. マルチブラケット装置のケア方法
矯正治療中は、口腔内を清潔に保つことが非常に重要です。適切なケアを行うことで、治療期間中のトラブルを防ぐことができます。
4-1. 矯正専用の歯ブラシを使う
通常の歯ブラシだけでは汚れが落としにくいため、矯正専用のブラシやワンタフトブラシを活用すると効果的です。歯並びがでこぼこしているところや、歯と歯が重なっているところ、矯正装置のすき間、ワイヤーの真下や歯と歯の間などに使用すると効果的です。また、フッ素入りの歯磨き粉を使用すると虫歯予防にもなります。
4-2. デンタルフロスや歯間ブラシを活用
ワイヤーが邪魔で通常のフロスが使いにくいため、矯正用フロススレッダーを使うとスムーズに通せます。ブラケット周りやワイヤーの下は、食べかすやプラーク、着色汚れが溜まりやすいところです。その際、歯間ブラシも効果的に汚れを落とせるので、併用するとよいでしょう。
4-3. 食事に注意する
マルチブラケット装置を装着している間は、硬い食べ物(ナッツ、せんべい、氷など)や粘着性の高い食べ物(ガム、キャラメル、餅など)はブラケットやワイヤーを破損したり、外れてしまうリスクがあるので避けることが推奨されます。また、**着色しやすい食べ物(カレー、コーヒー、赤ワインなど)**はブラケットやワイヤーを変色させることがあるので注意が必要です。
5. まとめ
今回は、みなさんが矯正治療を考えるにあたり1番最初に浮かぶであろうマルチブラケット装置について書いてみました。
マルチブラケット装置は、日々進化し続ける矯正歯科界のなかで最も歴史の古い装置です。矯正治療の中でも確実に歯を動かせる効果的な装置であり、多くの症例に対応できます。一方で、見た目や歯磨きの難しさといったデメリットもあるため、適切なケアをしながら治療を進めることが大切です。
矯正治療を検討しておられる方は、歯科医院でしっかりと相談し、自分に合った治療方法を選ぶようにしましょう。
当院では矯正無料相談を行なっております。治療計画、矯正期間や料金などについてもお答え致します。ぜひ一度ご相談にいらしてください。
【監修者情報】
・H.F
・歯科衛生士
・5年
・姫路歯科衛生専門学校
・ご来院された患者様が、来院された時よりも良い笑顔でお帰り頂けるよう努めます。
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