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歯冠長延長術とは?抜歯を避けられる条件とデメリット

歯冠長延長術とは?抜歯を避けられる条件とデメリット|姫路駅前グランツ歯科|姫路市の歯科・口腔外科・矯正歯科

目次

「むし歯が歯ぐきの深くまで進んでいるので、抜歯になるかもしれません」「被せ物が外れた歯は、もう土台を作れません」。そう説明されると、できることなら自分の歯を残したいと思う一方、無理な治療を重ねて結局抜くことになるのも避けたい、と迷うのではないでしょうか。

歯ぐきより上に残る歯が短い場合、選択肢の一つに歯冠長延長術(しかんちょうえんちょうじゅつ/クラウンレングスニング)があります。歯肉や必要に応じて歯を支える骨の形を整え、歯ぐきの下に隠れている健全な歯質を露出させる外科処置です。被せ物を作るための境界と、歯を抱え込むように支える歯質を確保できれば、保存できる可能性があります。

ただし、歯冠長延長術は「抜歯と言われた歯を必ず残す手術」ではありません。骨を整えることで歯根の支えが少なくなる、隣の歯の骨や歯ぐきにも影響する、根の分かれ目が露出するなど、残すための処置がかえって長期維持を難しくするケースもあります。大切なのは手術が技術的にできるかではなく、根管治療、歯周組織、残存歯質、噛み合わせを含め、治療後も清掃しながら使えるかを診断することです。

この記事では、歯冠長延長術の仕組み、歯を残せる条件と勧めにくい条件、矯正的挺出などとの違い、費用・期間・リスク、セルフケアと受診の境界を順に整理します。

「抜歯」と言われた理由を分けると、保存の可能性が見えてくる

同じ「抜歯の可能性があります」という説明でも、理由は一つではありません。歯冠長延長術が関係するのは、主に歯ぐきの下にむし歯や破折線が及び、被せ物を安定して作るための健全な歯質が足りない状態です。歯根の先の感染、縦方向の歯根破折、重度歯周病など、別の問題が中心なら、歯冠長延長術だけでは解決できません。

歯ぐきの下まで進んだむし歯

むし歯を取り切った境界が歯ぐきの深い位置にあると、見えにくく、器具も届きにくいため、精密な形成・型取り・接着が難しくなります。被せ物の縁が歯周組織に近すぎると、清掃しにくく、慢性的な炎症や再むし歯につながるおそれもあります。歯冠長延長術は、健全な歯質と歯周組織の位置関係を整え、治療操作と日常の清掃ができる環境を作る目的で検討されます[1]。

歯ぐきより下で折れた歯・短くなった歯

硬い物を噛んだ、被せ物が外れた、土台ごと歯が欠けたなどにより、破折線が歯ぐきの下へ及ぶことがあります。横方向や斜めの破折が限局し、深さと歯根の長さに余裕があれば、破折部を露出させて修復できる場合があります。一方、歯根が縦に割れている場合や、破折が根の深い位置まで続く場合は、感染源を封鎖できず、保存を勧めにくいことがあります。

根管治療後の歯で、被せ物を支える歯質が少ない

神経を取った歯は、治療そのものだけでなく、もともとのむし歯や過去の修復によって多くの歯質を失っていることがあります。根の中へ太い土台を入れれば強くなる、というわけではありません。欧州歯内療法学会のポジションステートメントでも、根管治療後の歯の修復では、残っている健全な歯質の量と配置を評価し、できるだけ保存することが重視されています[2]。

したがって、保存診断では「根の治療ができるか」と「その上に長く使える修復物を作れるか」を分けて考えます。根管内の感染をコントロールできても、歯ぐきより上の歯質がほとんどなければ、被せ物が外れる、歯根が割れるといった構造上の問題が残るからです。

重度歯周病や歯根破折など、別の理由が中心のケース

歯を支える骨が大きく失われ、強い揺れがある歯に歯冠長延長術を行うと、支持をさらに減らす可能性があります。根の先の病変が治りにくい、歯根が縦に割れている、根の吸収が進んでいるといった場合も、歯肉や骨の位置を変えるだけでは原因を除けません。まず抜歯を勧められた根拠を確認し、必要なら被せ物や土台を外した破折診断、歯周検査、根管治療の再評価を行います。

歯冠長延長術とは―歯を伸ばすのではなく、健全な歯質を露出させる処置

歯冠長延長術という名称から、歯そのものを長くする治療を想像するかもしれません。実際には、歯肉を根の方向へ移動し、必要な場合は歯槽骨の形も整えて、歯ぐきより上に見える歯の部分を増やします。適応は修復目的だけでなく、短く見える歯や不ぞろいな歯肉ラインを整える審美目的もありますが、この記事では深いむし歯や破折した歯を修復する目的に絞って説明します。

被せ物の縁と歯周組織の間に必要な距離を作る

歯肉のすぐ下には、歯と歯肉が付着して外からの刺激を防ぐ「歯肉上皮・結合組織性付着」があります。現在は歯槽骨頂上組織付着(supracrestal tissue attachment)と呼ばれる領域です。被せ物の縁がこの付着領域を侵す位置に置かれると、出血や腫れが続き、歯周組織が変化する可能性があります。

日本歯周病学会の解説では、歯肉縁下むし歯や破折に対して、歯槽骨頂から歯の修復境界までの距離を確保するため、骨外科を伴う歯肉弁根尖側移動術などを用いる考え方が示されています[1]。ただし、必要な距離は歯肉の厚み、骨の形、歯の位置によって異なります。数値だけで一律に削るのではなく、歯周ポケット測定や麻酔下のボーンサウンディングで個別に確認します。

「フェルール」を作れるかが被せ物の安定に関わる

フェルールとは、被せ物が歯ぐきより上に残る健全な歯質を帯状に取り囲む構造です。樽の周りを金属の輪で締める「たが」にたとえられます。根管治療後の歯を対象とした系統的レビュー・メタ解析では、フェルールの存在や高さ、厚み、周囲をどの程度連続して囲めるかが破折抵抗や臨床成績と関連し、自然な歯質を残すことの重要性が示されています[3]。従来のレビューでも、1.5〜2mm程度のフェルールが有利とされる一方、歯の部位や残存壁、研究条件による差が指摘されています[4]。

この数値は「2mmあれば必ず長持ちする」という保証ではありません。2026年のメタ解析にも臨床研究だけでなく実験研究や有限要素解析が含まれ、研究デザインにはばらつきがあります[3]。歯根の太さと長さ、歯質の厚み、根管治療の状態、噛む力、被せ物の設計を合わせて評価します。

歯肉切除だけでよい場合と、骨の調整が必要な場合がある

むし歯の境界が歯ぐきに覆われていても、歯槽骨から十分に離れていれば、歯肉の一部を整える処置だけで修復できる場合があります。反対に、境界が骨に近く、付着領域を確保できない場合は、歯肉切除だけでは歯肉が戻ったり、炎症が続いたりする可能性があります。その場合は歯肉を開き、骨の高さと形を確認して調整し、歯肉弁を根の方向へ固定します[1]。

歯を残せる条件と、歯冠長延長術を勧めにくい条件

歯冠長延長術の適応は、レントゲン写真だけ、または歯の見た目だけでは決められません。むし歯や破折部を確認し、歯周組織と根管、最終的な被せ物まで一つの治療計画として評価します。主な判断項目は次のとおりです。

残せる可能性を支える5つの条件

  1. 修復に使える健全な歯質が確保できる:むし歯や破折部を除去したあとに、被せ物の縁を清掃可能な位置へ置き、必要なフェルールを得られる見込みがある。
  2. 十分な歯根の長さと太さが残る:骨を整えたあとも、歯を支える根が短くなりすぎず、修復操作に耐えられる歯質の厚みがある。
  3. 歯周組織の支持が保たれている:重度の骨吸収や強い動揺がなく、歯周炎を治療・管理できる。
  4. 根管治療の予後を見込める:根管内の感染をコントロールでき、治癒が期待しにくい穿孔、吸収、縦方向の破折などがない。
  5. 清掃と噛み合わせを管理できる:術後に露出する根面や歯間部を清掃でき、特定の歯へ過度な力が集中しないよう調整・管理できる。

前歯では、隣の歯との歯肉ラインや歯間乳頭も確認します。一本だけ骨を下げると左右差が生じる場合があり、逆に複数歯の歯肉・骨を整えると、健康な隣在歯への影響が増えます。機能的には保存できても、見た目の変化を受け入れにくい場合は、矯正的挺出など別の方法を検討します。

抜歯を含む別の選択を検討しやすい状態

  • 歯根が縦方向に割れ、感染経路を封鎖できない
  • むし歯や破折が歯根の深部まで及び、手術後も修復できる健全歯質を確保できない
  • 根が短い、細い、強く曲がっているなど、骨を整えると歯冠歯根比が著しく不利になる
  • 重度歯周炎で支持骨が大きく失われ、動揺が強い
  • 奥歯の根分岐部が露出し、清掃しにくい形になる可能性が高い
  • 隣の歯の支持骨を大きく削らなければ処置できない
  • 根管治療の感染を制御できない、治癒を妨げる穿孔や吸収がある
  • 全身状態により外科処置のリスクが高く、主治医と相談しても安全に行いにくい

日本歯周病学会の解説でも、支持組織を大きく失った歯、保存不可能な歯周炎罹患歯、歯内療法の予後不良歯、隣在歯の骨を大きく切除する必要がある場合、不適切な歯冠歯根比や根分岐部露出を招く場合などが禁忌として挙げられています[1]。一つの条件だけで決めず、保存に必要な治療の総量と、予想される維持期間・再治療のしやすさを比較します。

診断では何を調べるのか

  • むし歯や破折の深さ、範囲、方向
  • 歯周ポケット、歯肉の厚み、角化歯肉、歯の動揺
  • 歯槽骨の高さと形、根分岐部までの距離
  • 歯根の長さ・太さ・形、根の先の病変、根管充填の状態
  • 残っている歯質の厚みと壁の数、フェルールを確保できる位置
  • 隣の歯の骨と歯肉への影響、前歯なら笑ったときの見え方
  • 噛み合わせ、歯ぎしり・食いしばり、対合歯の状態
  • 喫煙、糖尿病、服用薬など創傷治癒に関わる事項

被せ物や土台が残っていると、破折線やむし歯の全体像が見えないことがあります。必要に応じて古い修復物を外し、むし歯を除去してから初めて保存可否が分かることもあります。診断の段階で「残せる可能性はあるが、修復物を外した所見によっては抜歯へ変更する」と説明されるのは、曖昧さではなく、見えない部分を断定しないための重要な共有です。

歯冠長延長術・矯正的挺出・その他の方法を比較

歯ぐきの下にある健全な歯質を使える位置へ出す方法は、歯冠長延長術だけではありません。歯を矯正力で少しずつ引き出す矯正的挺出(エクストルージョン)、条件が限られる歯肉切除、接着材料で深い修復境界を持ち上げる方法、そして抜歯後に欠損を補う方法があります。どれを選ぶかは、処置の速さではなく、支持組織・審美性・清掃性・予後を合わせて考えます。

方法主に検討する状態利点限界・主な注意点
歯肉切除・歯肉整形むし歯や修復境界と歯槽骨の間に十分な距離があり、余分な歯肉を整えるだけで健全歯質を露出できる骨を削らず、外科的侵襲と治癒期間を抑えられる場合がある骨に近い病変では付着領域を確保できず、歯肉の戻りや炎症につながる。角化歯肉が少ない場合は適さない
歯冠長延長術歯ぐきの下のむし歯・破折、短い臨床歯冠、フェルール不足があり、骨と歯肉の位置を調整すれば修復できる比較的直接的に修復境界と健全歯質を露出できる。清掃しやすい被せ物の縁を作れる可能性がある支持骨を減らすため、歯冠歯根比、根分岐部、隣在歯、前歯の歯肉ラインへ影響する。手術後の後戻りも考慮する
矯正的挺出根の長さに余裕があり、骨を大きく削らずに深い破折部・むし歯を歯ぐきより上へ移動したい当該歯を移動させるため、周囲の支持骨を温存しやすい。前歯の歯肉ラインへの影響を抑えられる場合がある装置と治療期間が必要。移動後の保定、歯肉・骨の調整が必要になることがある。根が短い、形が不利な歯には適さない
深い修復境界の挙上隔壁を作って防湿・接着でき、歯周組織との距離を侵さずに接着材料で境界を歯冠側へ移せる限られたケース外科処置を避けられる可能性があり、歯質を温存しやすいすべての深いむし歯に使える方法ではない。出血・浸出液の管理、接着、清掃性、歯周組織との位置関係を厳密に評価する
抜歯して補う縦方向の歯根破折、深すぎる病変、支持骨不足などで長期保存が難しい保存困難な感染源を除去し、インプラント・ブリッジ・入れ歯から欠損補綴を計画できる天然歯を失う。外科処置、隣在歯への負担、治療期間、費用、将来の修理を方法ごとに比較する必要がある

歯冠長延長術と矯正的挺出の選び方

歯冠長延長術は必要な歯質を外科的に露出するため、矯正的挺出より短い経過で修復へ進められることがあります。一方、骨を削ることで支えが減るため、根が短い歯や根分岐部が骨に近い奥歯、歯肉の左右差が目立ちやすい前歯では不利になり得ます。

矯正的挺出は歯根を歯冠側へ移動させ、深い病変を露出します。周囲の骨を温存しやすい反面、装置をつけて歯を動かす期間と、移動後に位置を安定させる期間が必要です。歯と一緒に骨・歯肉を動かしたいか、歯だけを出したいかで矯正方法が変わり、最後に小範囲の歯周外科を組み合わせることもあります。フェルールを得る目的では、歯根と支持組織への影響を比較して選択します[4]。

保存治療と抜歯後の治療を同じ土俵で比べる

「天然歯だから何があっても残す」「インプラントのほうが新しいから抜く」という二者択一ではありません。保存する場合は、根管治療、歯周外科、矯正、土台、被せ物まで必要になることがあります。抜歯する場合も、抜歯後の骨・歯ぐきの変化、仮歯、インプラント・ブリッジ・入れ歯の負担と維持管理を考えます。

比較したいのは、初回治療の成功だけではなく、再発時に修理できるか、周囲組織をどれだけ失うか、他の歯へどのような負担がかかるか、通院と費用を受け入れられるかです。保存のための条件がそろっていれば天然歯を残す価値がありますが、条件が大きく不足する歯へ処置を重ねることが、必ずしも負担の少ない選択とは限りません。

治療の流れ、費用、期間、リスクと術後のセルフケア

診断から被せ物までの一般的な流れ

  1. 保存可否の診査:エックス線、歯周検査、残存歯質、動揺、噛み合わせを調べます。必要に応じて古い被せ物・土台を外し、破折やむし歯の範囲を確認します。
  2. 感染と炎症のコントロール:むし歯除去、根管治療、歯周基本治療などを行い、外科処置が可能な環境を整えます。
  3. 仮歯と最終形態の計画:必要なフェルール、被せ物の縁、術後の歯肉ライン、清掃器具が入る形を逆算します。
  4. 歯冠長延長術:局所麻酔下で歯肉を開き、必要な範囲の骨を整え、歯肉弁を根の方向へ移動して縫合します。骨との距離が十分なら、歯肉だけを整えることもあります。
  5. 術後管理:出血・腫れ・感染・歯肉の位置を確認し、時期を見て抜糸と清掃指導を行います。治癒中は仮歯の縁や噛み合わせを調整します。
  6. 土台・被せ物:歯肉の位置が安定し、根管治療と歯周組織に問題がないことを確認して、土台と最終的な被せ物を製作します。
  7. メインテナンス:歯周ポケット、根面むし歯、被せ物の縁、噛み合わせを定期的に確認します。

費用は手術だけでなく、保存に必要な全工程を確認する

姫路駅前グランツ歯科の料金表では、自由診療の歯冠長延長術は50,000円(税込)です(2026年10月6日確認)。これは歯を保存するための外科処置の料金であり、診断、根管治療、破折診断、土台、被せ物などが必要な場合は別途費用がかかります。

自由診療の項目公式料金(税込)確認したい点
歯冠長延長術50,000円対象歯・手術範囲、仮歯や術後管理をどこまで含むか
根管治療50,000円/1根管
樋状根70,000円
再治療の有無、根管数、土台・被せ物の費用
破折診断50,000円古い材料の除去とマイクロスコープによる診査の範囲
コア(土台)直接法20,000円
間接法30,000円
残存歯質と被せ物に応じた方法
セラミッククラウン前歯170,000円
奥歯150,000円
仮歯、色調・形態、噛み合わせ、保証条件

保険診療で対応できる範囲や、自由診療を組み合わせる条件は歯の状態によって異なります。相談時は「手術代」だけでなく、保存診断から最終的な被せ物までの総額、途中で保存困難と分かった場合の費用、再治療時の扱いを見積書で確認してください。

期間は数週間から数か月―歯肉の安定を待って修復する

歯冠長延長術は手術を行って終わりではありません。術後は歯肉が治りながら位置を変え、骨を調整したケースでは組織の成熟により長い期間が必要です。臨床研究では、術後3〜6か月の間にも歯肉辺縁の歯冠側移動、いわゆる後戻りが観察されています[5][6]。とくに前歯で被せ物の縁と左右の歯肉ラインを精密に合わせたい場合は、歯肉の安定を慎重に待ちます。

一般的には、診断と炎症のコントロール、手術、抜糸・経過観察、治癒待ち、土台・被せ物という順で進むため、全体は数週間から数か月以上かかります。根管治療や矯正的挺出を併用する場合はさらに長くなります。姫路駅前グランツ歯科の公式サイトには、歯冠長延長術の標準的な治療期間・通院回数の記載がないため、個別の計画時にご確認ください。

主なリスク・デメリットと限界

  • 手術後の痛み、腫れ、出血、内出血、感染、傷の治りの遅れ
  • 歯肉が下がり、歯が長く見える、歯と歯の間が広く見える、前歯の左右差が生じる
  • 根面が露出することによる知覚過敏、根面むし歯
  • 歯を支える骨が減ることで、歯冠歯根比が不利になる、動揺が増える
  • 奥歯の根分岐部が露出し、清掃が難しくなる
  • 隣の歯の骨・歯肉ラインへ影響する
  • 歯肉が歯冠側へ戻り、被せ物の縁や清掃性に影響する
  • 診査や手術中に深い破折・むし歯が判明し、保存できず抜歯へ変更する
  • 治療後もむし歯、歯周病、根管内感染、歯根破折などで歯を失う可能性がある

歯冠長延長術を受けても、歯の寿命が保証されるわけではありません。得られる健全歯質と引き換えに、どの程度の支持組織を失うのかを術前に評価し、利益が上回る場合に選択します。

セルフケアでできること、歯科受診が必要なこと

手術前に自宅でできるのは、歯を無理に使わず、指示された範囲で清潔を保ち、喫煙を控え、服薬・持病を正確に伝える準備をすることです。外れた被せ物を市販の接着剤で戻す、腫れた歯肉を強く押す、余った抗菌薬を自己判断で飲む、痛みが減ったから処方薬を中断するといった対応は避けてください。抗凝固薬や骨粗しょう症薬などを服用している場合も、自分で休薬せず、歯科医師と処方医へ相談します。

術後の歯磨き・洗口・食事・運動・飲酒は、手術範囲によって指示が異なります。手術部位を自己判断で強く磨かず、指定された清掃再開時期と歯間ブラシのサイズを守ります。根面が露出したあとは、フッ化物配合歯磨剤の使用や清掃方法について歯科衛生士の指導を受けることが、根面むし歯の予防に役立ちます[1]。

顔まで広がる腫れ、発熱、飲み込みにくさ、息苦しさ、急に強くなる痛みがある場合は、治療方法の比較より感染への対応を優先します。手術後に圧迫しても止まりにくい出血、日ごとに増える腫れ・痛み、膿、強い口臭、仮歯の脱離、歯の揺れが増した場合も、予約日を待たずに治療を受けた歯科医院へ連絡してください。呼吸や嚥下に支障がある場合は救急医療への相談が必要です。

よくある質問

歯冠長延長術をすれば、抜歯を必ず避けられますか?

いいえ。むし歯・破折の深さ、残存歯質、歯根の長さ、歯周支持、根管治療の予後、根分岐部、隣在歯への影響などの条件がそろう場合に、保存の選択肢となります。古い被せ物や土台を外して初めて縦方向の破折が分かり、抜歯へ変更することもあります。

神経を取った歯でも受けられますか?

神経を取った歯は、歯冠長延長術の対象になることがあります。むしろ根管治療後に歯質が少なく、フェルールを確保するため検討されるケースがあります。ただし、根管内の感染、歯根破折、穿孔、根の薄さなどを評価し、根管治療と最終的な被せ物まで見通して判断します。

前歯でもできますか?見た目は変わりますか?

前歯にも行えますが、歯肉が下がって歯が長く見える、隣の歯との歯肉ラインがずれる、歯間のすき間が目立つ可能性があります。一本だけ処置するか、周囲の歯肉ラインも整えるか、矯正的挺出のほうが組織を温存しやすいかを比較します。笑ったときに歯肉が見える量も重要です。

奥歯で注意することはありますか?

複数の根を持つ奥歯では、骨を下げると根分岐部が露出し、歯ブラシや歯間ブラシが届きにくくなることがあります。根分岐部までの距離、歯根の長さ、周囲の骨を確認し、清掃可能な形を作れるか判断します。日本歯周病学会の解説でも、ルートトランクが短く根分岐部が露出する歯は、歯冠長延長術の禁忌として挙げられています[1]。

歯冠長延長術とインプラントでは、どちらが長持ちしますか?

方法名だけでは比較できません。保存する歯の残存歯質、歯周支持、根管治療、噛み合わせと、抜歯後の骨・歯肉、隣在歯、全身状態によって予後は変わります。歯冠長延長術を含む保存治療の総工程・再治療可能性と、抜歯後のインプラント・ブリッジ・入れ歯の手術、期間、費用、維持管理を同じ条件で比べてください。

他院で抜歯と言われた場合、何を持って相談すればよいですか?

紹介状、レントゲン・CT画像、これまでの根管治療や被せ物の経緯、服薬が分かるお薬手帳があればお持ちください。資料がなくても診察はできます。急性の腫れや痛みがなければ、抜歯前に相談すると、現在の歯と歯肉の状態を記録し、保存治療と抜歯後の選択肢を比較しやすくなります。

関連ページ

姫路駅前グランツ歯科では、むし歯・根管・歯周組織・被せ物・噛み合わせを分けず、歯を残した場合と抜歯した場合の見通しを含めて治療計画を検討します。公式料金表には歯冠長延長術と破折診断、根管治療、土台、被せ物の費用を掲載しています。抜歯を勧められた歯について、保存を試みる条件と限界を確認したい方は、診断資料をお持ちのうえご相談ください。

  • むし歯治療:むし歯の進行、神経を残す治療、マイクロスコープを用いる処置について紹介しています。
  • 根管治療:根の中の感染を除去し、歯を保存するための治療方針を確認できます。
  • 歯周病治療:歯を支える組織の検査、基本治療、歯周外科の考え方を紹介しています。
  • 審美治療(セラミック):歯の形を回復するクラウンや、治療前のシミュレーションについて紹介しています。
  • 料金表:歯冠長延長術、破折診断、根管治療、土台、被せ物などの自由診療費をご覧いただけます。

この記事は、歯冠長延長術と歯の保存に関する一般的な医療情報を提供するもので、個別の診断や治療結果を保証するものではありません。適応、治療方法、期間、費用は、歯と歯周組織、噛み合わせ、全身状態、検査結果によって異なります。具体的な治療方針は、歯科医師の診察と説明を受けたうえでご判断ください。

参考文献

  1. 岡安こずえ, 大澤銀子, 仲谷寛. 外科的歯冠長延長術―一般歯科医からの依頼に応える―. 日本歯周病学会会誌. 2017;59(4):199-204. doi:10.2329/perio.59.199.
  2. Mannocci F, Bhuva B, Roig M, Zarow M, Bitter K. European Society of Endodontology position statement: The restoration of root filled teeth. Int Endod J. 2021;54(11):1974-1981. doi:10.1111/iej.13607. PMID: 34378217.
  3. Hajeer O, Hasan A, Kanout C, Morad ML. Ferrule dimensions and restoration outcomes in endodontically treated teeth: A systematic review and meta-analysis. J Prosthodont. 2026;35(4):450-459. doi:10.1111/jopr.70099. PMID: 41601347.
  4. Juloski J, Radovic I, Goracci C, Vulicevic ZR, Ferrari M. Ferrule effect: A literature review. J Endod. 2012;38(1):11-19. doi:10.1016/j.joen.2011.09.024. PMID: 22152612.
  5. Deas DE, Moritz AJ, McDonnell HT, Powell CA, Mealey BL. Osseous surgery for crown lengthening: A 6-month clinical study. J Periodontol. 2004;75(9):1288-1294. doi:10.1902/jop.2004.75.9.1288. PMID: 15515347.
  6. Pontoriero R, Carnevale G. Surgical crown lengthening: A 12-month clinical wound healing study. J Periodontol. 2001;72(7):841-848. doi:10.1902/jop.2001.72.7.841. PMID: 11495130.

この記事の監修者

姫路駅前グランツ歯科 院長 粟谷 英信
2010年大阪大学歯学部卒業。滋賀県立成人病センター(現・滋賀県立総合病院)歯科口腔外科勤務などを経て、2019年に姫路駅前グランツ歯科を開院。日本顎咬合学会認定医、臨床研修指導医。日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会、日本臨床歯周病学会、日本臨床歯科学会(SJCD)に所属しています。詳しい経歴・資格は院長紹介をご覧ください。